特定技能で訪問介護が解禁!受け入れ要件・手続きの流れをわかりやすく解説
- 干泥 信隆

- 2 日前
- 読了時間: 12分
2025年4月、特定技能「介護」を持つ外国人が訪問介護に従事できるようになりました。
これまで施設内の介護業務に限られていた特定技能外国人の活躍の場が、利用者の自宅にまで広がったことになります。
訪問介護員(ホームヘルパー)の人手不足は年々深刻になっており、外国人材の活用は多くの事業所にとって現実的な選択肢になりつつあります。
本記事では、特定技能外国人が訪問介護に従事するための要件や、受け入れ事業所が対応すべき手続き・注意点をわかりやすく解説します。
これから外国人材の採用を検討している介護事業所の経営者・管理者の方は、ぜひ参考にしてください。
特定技能で訪問介護が解禁された背景
特定技能外国人による訪問介護への従事が認められたのは、訪問介護業界が抱える人手不足と、現場で働く人材の高齢化という2つの課題が背景にあります。ここでは、解禁に至った経緯を整理します。
訪問介護員の人手不足・高齢化が限界に
公益財団法人介護労働安定センターが実施した「令和5年度介護労働実態調査」によると、訪問介護員について「不足している」と回答した事業所は81.4%にのぼり、調査対象となった職種の中でも特に高い水準となっています。
また、訪問介護員はほかの介護職種に比べて高齢の人材が多い傾向も以前から指摘されており、人手不足と高齢化が同時に進む現場も少なくありません。
新たな人材を確保できないまま事業所の廃止に至るケースも増えており、業界全体で人材供給のルートを広げる必要性が高まっていました。
2025年4月21日、特定技能の訪問介護への適用が正式スタート
こうした状況を受け、厚生労働省の検討会では、一定の条件のもとで特定技能外国人による訪問系サービスへの従事を認めるべきとの方針が示されました。この方針は2025年3月に閣議決定され、同年4月21日に施行されています。
これまで訪問介護に従事できる在留資格は「介護」や「特定活動(EPA)」に限られていましたが、今回の改正により「特定技能」が新たに加わりました。
訪問介護の現場にとっては、人材確保の選択肢が広がる大きな転換点となっています。
特定技能外国人が訪問介護に従事できる対象サービスとは
解禁の対象となるのは、訪問介護だけではありません。ここでは、特定技能外国人が従事できる訪問系サービスの範囲と、対象となる施設の種類を確認します。
解禁の対象となる訪問系サービスの種類
特定技能外国人が従事できる訪問系サービスには、訪問介護のほか、以下の項目が対象となります。
訪問入浴介護
夜間対応型訪問介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
いずれも利用者の自宅やそれに準じた環境でサービスを提供する点が共通しています。
対象範囲は今後の制度運用の中で見直される可能性もあるため、自社が提供しているサービスが対象に含まれるかどうかは、最新の情報を確認しながら判断することが大切です。
サ高住・住宅型有料老人ホームへの訪問も可能になった
今回の改正によって、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や、特定施設に該当しない住宅型有料老人ホームへの訪問も、特定技能外国人が対応できるようになりました。
これまでは、こうした住宅へのサービス提供は特定技能制度の対象外とされていました。
サ高住や住宅型有料老人ホームに併設された訪問介護事業所を運営している場合、これまで人員配置の面で外国人材を活用しづらかった部分にも、特定技能外国人を充てられる可能性が出てきます。
自社の事業形態に当てはめて、どの業務に活用できそうか整理しておくとよいでしょう。
特定技能外国人が訪問介護に従事するための要件
特定技能外国人が訪問介護の業務に従事するには、在留資格に加えて、研修の修了状況や実務経験についての条件を満たす必要があります。ここでは、3つの要件を順に見ていきます。
要件①:在留資格「特定技能(介護)」を持っていること
まず大前提として、対象となる外国人が在留資格「特定技能」のうち「介護」分野の在留資格を保有していることが必要です。技能実習や留学など、他の在留資格では今回の訪問介護解禁の対象にはなりません。
すでに施設介護で特定技能「介護」の外国人を雇用している事業所であれば、在留資格自体は満たしている状態です。あとは、次にご紹介する研修や実務経験の条件をクリアしているかを確認していくことになります。
要件②:介護職員初任者研修を修了していること
介護職員初任者研修とは、介護の基本的な知識・技術を学ぶための入門的な研修で、訪問介護員として働くために必要とされる資格の一つです。特定技能外国人が訪問介護に従事するためには、この初任者研修、またはそれに準ずる研修を修了していることが条件となります。
施設介護のみを経験してきた外国人材の場合、初任者研修を受講していないケースもあります。訪問介護への配置を検討する際は、対象者がすでに研修を修了しているか、まだ受講が必要かを早めに確認しておくと、その後の準備がスムーズになります。
要件③:介護事業所での実務経験が1年以上あること
もう一つの条件は、介護事業所などでの実務経験が原則1年以上あることです。これは、訪問介護が利用者の自宅で1対1で行われる業務であるため、ある程度現場に慣れた状態での配置が前提とされているためです。
この「1年以上」がどの時点から数えられるのかについては、後ほど「受け入れにあたって注意したいポイント」の章で詳しく解説します。採用計画を立てる際に見落としやすいポイントなので、ぜひ確認しておいてください。
受け入れ前に必要な準備と手続き
要件を満たす外国人材が見つかったとしても、すぐに訪問介護の現場に配置できるわけではありません。受け入れ事業所側には、事前に済ませておくべき手続きが3つあります。
①協議会へ適合確認書の発行申請を行う
特定技能外国人を訪問系サービスに従事させるには、「介護分野における特定技能協議会」に対して必要書類を提出し、適合確認書の発行を受ける必要があります。
適合確認書とは、受け入れ体制が国の定める遵守事項を満たしていることを協議会が確認した証明書類です。
適合確認書が発行される前に外国人を訪問介護の業務に従事させることはできません。申請から発行までには一定の時間がかかるため、配置を予定している時期から逆算して、早めに準備を始めることをおすすめします。
②外国人スタッフへの事前研修を実施する
受け入れ事業所は、訪問介護等の業務に関する基本的な事項についての研修を、対象となる外国人スタッフに対して行う必要があります。
利用者の居宅でサービスを提供する際の基本的な進め方や、生活支援の技術、利用者とのコミュニケーションの取り方、日本での生活様式に関する知識などが研修の内容として想定されます。
施設介護とは異なり、訪問介護では基本的に一人で利用者の自宅を訪問することになります。配属後にスムーズに業務へ入ってもらうためにも、研修の内容は実際の訪問場面を想定した、具体的なものにしておくことが望ましいでしょう。
③キャリアアップ計画書を作成・提出する
受け入れ事業所は、対象となる外国人に対して訪問介護等の業務内容について丁寧に説明を行い、本人の意向を確認したうえで、キャリアアップ計画を作成する必要があります。キャリアアップ計画とは、その外国人が今後どのように技能を高め、ステップアップしていくかを示す計画のことです。
この計画は1年単位で評価され、評価期間が終了するごとに新たな計画を作成し、定められた期限内に提出することが求められます。
一度作成して終わりではなく、継続的に運用していく書類であることを念頭に置いておきましょう。
受け入れ後に継続して対応すべきこと
受け入れ前の手続きが完了した後も、訪問介護の現場で外国人スタッフが安心して働けるよう、事業所側が継続的に対応すべき事項があります。ここでは3つのポイントを解説します。
④一定期間は責任者が同行してOJTを実施する
特定技能外国人が訪問介護等の業務に従事する際は、一定期間、責任者などが同行する形でOJT(実地研修)を行うことが求められます。
OJTとは、実際の業務を通じて必要なスキルを身につけてもらうための実地研修のことです。
利用者ごとに介護度や生活環境、コミュニケーションの取り方は異なります。座学の研修だけでは対応しきれない部分を、同行訪問を通じて補っていくイメージです。
どのくらいの期間・件数の同行が必要かは、対象者の経験や習熟度に応じて事業所側で判断していくことになります。
⑤緊急時対応のためのICT環境を整備する
特定技能外国人が訪問先で予期しないトラブルに遭遇した場合に適切に対応できるよう、ICT(情報通信技術)を活用した環境整備を行うことも、受け入れ事業所に求められる対応の一つです。
具体的には、訪問先から事業所へすぐに連絡が取れる体制や、必要に応じて言語面のサポートを受けられる仕組みなどが考えられます。
一人で訪問する場面が多い訪問介護だからこそ、「何かあったときにすぐ相談できる」という安心感を用意しておくことが、外国人スタッフの定着にもつながります。
⑥ハラスメント相談窓口を設置する
受け入れ事業所は、ハラスメントを防止するための相談窓口を設置するなど、必要な措置を講じることが求められます。
利用者やその家族との関係においても、外国人スタッフが困りごとを安心して相談できる体制を整えておく必要があります。
相談窓口は、必ずしも新しい仕組みを大がかりに用意する必要はありません。既存の相談体制に外国人スタッフ向けの窓口としての位置づけを明確にし、本人にしっかり周知しておくことが第一歩になります。
訪問介護で特定技能外国人を受け入れるメリット
受け入れにあたっては準備すべきことが多くありますが、その分、事業所にとって得られるメリットも大きいといえます。ここでは代表的な3つのメリットをご紹介します。
慢性的な人手不足の解消につながる
訪問介護員の人手不足は、求人を出してもなかなか応募が集まらないという事業所が多いのが実情です。特定技能外国人という新たな人材プールが訪問介護にも開かれたことで、これまでアプローチできなかった層から人材を確保できる可能性が広がります。
特に、これまで施設介護でのみ特定技能外国人を受け入れていた事業所にとっては、同じ法人内で訪問介護部門への人材配置の幅が広がることも、運営上のメリットといえるでしょう。
最長5年の継続雇用が可能で人材が安定する
特定技能1号の在留期間は最長5年です。
技能実習のように受け入れ期間ごとに人材が入れ替わるのではなく、同じスタッフに比較的長期間働いてもらえるため、利用者との関係構築や業務の習熟という面でも安定が期待できます。
さらに、本人が介護福祉士の国家資格を取得すれば、在留資格「介護」に切り替えることで、5年という期間の制限なく働き続けることも可能になります。長期的な人材確保の観点からも、キャリアパスの選択肢を示せることは大きな利点です。
介護福祉士取得でさらに長期的な戦力になる
特定技能で受け入れた外国人スタッフが介護福祉士の資格を取得すれば、在留資格「介護」への変更が可能になり、より長期的な戦力として活躍してもらえます。
資格取得を後押しする教育体制を整えることは、外国人スタッフ本人のモチベーション向上にもつながります。
訪問介護の現場経験を積みながら資格取得を目指せる環境は、外国人材にとっても自身のキャリア形成という観点で魅力的です。事業所側が学習支援やシフト面での配慮を行うことで、定着率の向上にもつながっていくでしょう。
受け入れにあたって注意したいポイント
特定技能外国人の訪問介護への受け入れには大きな可能性がある一方で、見落とすと計画に影響が出てしまう注意点もあります。ここでは特に確認しておきたい2つのポイントを解説します。
「実務経験1年」の起算ルールに注意が必要
訪問介護に従事するための要件である「実務経験1年以上」は、どの時点を起点として数えるのかが採用計画に大きく影響します。施設配属からの在籍期間がそのまま実務経験としてカウントされるとは限らず、業務内容や勤務形態によって扱いが変わる可能性があります。
「来月から訪問介護に配置したい」と考えていても、実務経験の要件を満たすタイミングが想定より後になるケースも考えられます。配置を検討している外国人スタッフがいる場合は、現時点での実務経験の積み上げ状況を早めに確認しておくことをおすすめします。
訪問介護専門の事業所は要件を満たしにくいケースがある
デイサービスや入所施設を併設せず、指定訪問介護のみを運営している事業所の場合、特定技能外国人を受け入れるための実務経験を、自社内だけで積んでもらうことが難しい場合があります。
実務経験の要件は「介護事業所等」での経験を前提としているため、施設介護の経験がない状態からのスタートでは、要件を満たすまでに時間がかかることがあります。
このようなケースでは、関連法人の施設で一定期間経験を積んでもらってから訪問介護に配置するなど、グループ全体での人材育成計画を検討することが一つの方法になります。自社単独での対応が難しいと感じた場合は、早い段階で外部の専門家に相談することをおすすめします。
外国人スタッフの実務者研修はSakulaにご相談ください

特定技能外国人を訪問介護の現場で活躍させるためには、初任者研修や実務経験といった要件を満たすだけでなく、現場で実際に通用する実務スキルを身につけてもらうことが欠かせません。
Sakulaでは、外国人介護人材に向けた実務者研修を提供しており、訪問介護への配置を見据えた人材育成のサポートが可能です。
特定技能外国人の受け入れを検討している、あるいは訪問介護への配置に向けて準備を進めたいという事業所の方は、まずはお気軽にご相談ください。




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